円形脱毛症の患者様(9歳の小児女性 汎発型円形脱毛症)
小児の円形脱毛症の患者様です。
治療を行っているにも関わらず急激に悪化して来たためご来院されました。
『駅前AGAクリニック神戸三宮院』と『駅前AGAクリニック大阪梅田院』の両院で治療を行っていくことになりました。
円形脱毛症には数々の分類がありますが、この患者様は急速進行性の汎発型円形脱毛症という診断になります。
メソセラピー局所免疫療法
JAK阻害薬とステロイド外用薬
超高濃度ミノキシジル外用薬
治療開始から2週間後です。
元々は長かった毛髪もほとんど抜け落ちてしまいました。
髪を引っ張ると全て抜けてしまいます。
治療開始から2か月後です。
新しい毛髪が生えてきています。
ただ、まだまだ抜け毛が多いです。
治療開始から5か月後です。
抜け毛が起きるたびに不安になりますが、円形脱毛症の活動性が下がって来ています。
治療開始から10か月後です。
毛髪はかなり増えて来ましたが、まだ眉の外側や体毛が少ない状態です。
そのため汎発型という診断はまだ変わらないです。
体毛に関してはメソセラピー局所免疫療法を行うことができません。
円形脱毛症は一番ひどい部分の毛髪が生えてきてから遅れて他の部位の毛髪が生えて来ることが多いです。
この患者様ではまつ毛も生えてきました。
今後さらに改善していくと感じられます。
小児の円形脱毛症には早めの治療が必要です。
古いデータですが、日本の池田先生が円形脱毛症の小児患者を観察して分かったことがあります。
6歳以下の53人の円形脱毛症の患者の経過を見て行くと全員が慢性型の円形脱毛症に移行したのです。
慢性型円形脱毛症とは経過が1年以上長引くタイプの円形脱毛症のことです。
7歳~12歳の円形脱毛症の患者83人を観察すると47人(56.6%)は3年以内に完治していますが、36人は慢性化して重症化しています。
その中の18人は急速進行性であり、残りの18人は一旦回復して再発しています。
このように小児の円形脱毛症では無治療だと治る見込みが少ないのです。
そのため小児の円形脱毛症にたいしては積極的な治療が必要になります。
また我々の経験からも円形脱毛症は罹患期間が長ければ長いほど治りにくいことが分かっています。
この症例の患者様のように急速に進行するタイプは治療が早ければ意外に簡単に治ってしまうことが多いです。
逆に10年以上経過しているような症例では円形脱毛症が固定してしまっていて治りにくいことも実感しております。
例えば単発型のシンプルな円形脱毛症であっても罹患期間が10年程度ある場合は治療にも時間がかかると予想されます。
罹患期間と治りにくさに関連性があるのは免疫の記憶のメカニズムに関わっているのではないかと私は推測しております。
今回の症例は治療開始が早かったのが功を奏したと考えられます。
ただ、まだ治りきっていないので今後も最後まで治療を続けることが大切となります。
治療までの経過と他の治療方法について
この患者様の場合は当院受診の6カ月前に重いインフルエンザに罹患しております。
この先行感染が円形脱毛症のきっかけになっている可能性はあります。
その後、円形脱毛症に気づき5カ月前に近所の皮膚科を受診しました。
4カ月前には大きな病院でアンテベート(ステロイド外用薬)と液体窒素による冷却療法を行っています。
3カ月前に別の病院でアンテベートをリドメックスに変更し局所免疫療法(SADBE)の感作を行っています。
それでも急速に脱毛が進行しているためセカンドオピニオンのために当院を受診されました。
円形脱毛症の部位が限定している場合には局所免疫療法は有効ですが、頭部全体に広がっている状態では難しいです。
また、治療効果もメソセラピー局所免疫療法には劣ってしまいます。
小児ということも考慮すると早めの治療が必要な重症円形脱毛症と考えられました。
SADBEは中止してすぐにメソセラピー局所免疫療法で治療を開始することになりました。
メソセラピー局所免疫療法以外のその他の治療の選択肢としてはステロイドを皮下に注射したり内服したりといったものもありますが副作用も無視できません。
また、最近ではバリシチニブ(オルミエント)やリトレシチニブ(リットフーロ)のようなJAK阻害薬も保険適用され始めました。
ただこれらの薬剤には非常に大きな副作用があるため臨床ではなかなか使用できません。
例えば12歳から使用できるリットフーロではリンパ球減少が1.6%、血小板減少が0.3%、その他に感染症や静脈血栓塞栓症など命に関わるような副作用が高頻度であります。
また、潜在的リスクとして悪性腫瘍、消化管穿孔、間質性肺炎など無視できないものもあります。
特に小児の場合は悪性腫瘍の評価には時間がかかります。
10年後や20年後に悪性腫瘍の発生率が高かったことが判明しても取り返しがつきません。
メソセラピー局所免疫療法は薬剤の体内への移行が非常に少ないため安全性の高い治療だと考えられます。
執筆 駅前AGAクリニック大阪梅田院 田坂洋介
治療内容 | メソセラピー局所免疫療法 |
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治療の説明 | マイクロニードルを使用した免疫の正常化療法 |
治療の副作用 | 頭皮の赤み(数日)、軽度の痛み、ほてりなど。 |
治療費の概算 | 40,000円~70,000円/1回(税抜)※治療回数により変動。 |
治療内容 | ミノキシジル内服・外用、オリジナルサプリ |
治療の説明 | 強い毛髪を育て、免疫の攻撃を抑える治療。 |
治療の副作用 | むくみ、動悸、体毛、かぶれなどがみられる場合があります。 |
治療費の概算 | 3,000円~23,000円/1ヶ月(税抜)※処方内容により変動。 |