デュタステリドのジェネリックを見比べてみました
ジェネリックってなに?後発薬ってなに?
製薬メーカーが薬剤を開発していますが、最初にできた製品は先発品と呼ばれ特許で保護されることになります。
この特許が切れた後に販売される安価な製品をジェネリック医薬品もしくは後発薬と呼びます。
デュタステリドの先発品は『ザガーロ』という商品名でした。
このザガーロの特許はすでに切れています。
そのため、今では数多くのジェネリック医薬品が発売されています。
一般的にジェネリック医薬品の名称には法則があります。
成分名であるデュタステリドを製品名にしてその後ろに会社名が入ります。
例えば、沢井製薬がジェネリックのデュタステリドを製造販売する場合はデュタステリドカプセル0.5mgZA「サワイ」のようになります。
後発薬は通常のブランド名医薬品と同じ有効成分を含んでいますのでほとんど効果に違いはありません。
では、実際にそれぞれの会社のジェネリック製剤にはどのような違いがあるのでしょうか。
日本国内のデュタステリド製剤は先発品と同じようにほとんどがカプセル製剤です。
今回はそれらの各カプセル製剤を大阪梅田院の院長である田坂洋介が実際に購入して比較してみました。
今回はカプセル製剤を見比べることで色々と推測してみた内容となります。
憶測部分が多いことをご了承ください。
日本国内のカプセル医薬品の製造会社は実質4社程度しかない!!
日本国内でデュタステリドを製造する場合はまずは原薬を海外から輸入してきます。
そして、それを調合して医療用カプセルに詰めます。
実は日本国内でカプセル医薬品製剤を製造できる会社はたったの数社しかないのです。
各製薬メーカーがデュタステリドの製造をする場合、結局これらの下請けの製造会社にオーダーする形になります。
具体的にどの製剤がどこで製造されているかまで正確には分かりませんが、薬剤の外見からある程度の推測が可能です。
原薬に関してはどうでしょう。
恐らくですが、製造工場が同じであれば効率を考えて同じ原薬メーカーから仕入れている可能性が高いのではないでしょうか。
では実際に各製品を見てみましょう。
沢井製薬株式会社のデュタステリドカプセル0.5mgZA「サワイ」
沢井製薬はジェネリック医薬品の国内最大手です。
日本国内の処方薬の80%程度がジェネリック医薬品です。
その多くを沢井製薬が製造しているので非常に重要なメーカーです。
沢井製薬のデュタステリド製剤はどこで作っているのでしょうか。
この製剤の外観はデュタステリドの先発品ザガーロにそっくりということが分かります。
これは先発品と同じ工場で製造している可能性が高いと推測します。
株式会社ビオメディクスのデュタステリドカプセル0.5mgZA「BMD」
株式会社ビオメディクスが製造しているデュタステリドカプセル製剤です。
製造販売は株式会社ビオメディクスですが、SKIファーマ株式会社も販売しています。
沢井製薬の剤形に非常に良く似ています。
このデュタステリドカプセルがジェネリックのスタンダードと考えて良いのかもしれません。
ビオメディクスのグループ会社に富士カプセルという会社があります。
富士カプセルは創業1939年で、日本で最初に誕生したソフトカプセルメーカーです。
そうするとこの薬剤は富士カプセルで製造されているのかもしれません。
マイラン製薬株式会社のデュタステリドカプセル0.5mgZA「MYL」
Mylanが製造しているデュタステリドカプセルです。
MylanはViatrisグループの一員です。
Viatrisはアメリカにあるグローバル医薬品企業ですが、年間800億錠以上を製造する巨大メーカーです。
国内最大手の沢井製薬株式会社でも年間製造量が171億錠なので、Viatrisの製造規模の大きさが分かると思います。
この製剤も上記のカプセル製剤と外観が同じです。
やはり同じ製造工場なのでしょう。
医薬品卸大手のアルフレッサ株式会社のデュタステリドカプセル0.5mgZA「AFP」
アルフレッサが製造販売しているデュタステリドです。
アルフレッサはメディパルHDに継ぐ医薬品卸の2番手の会社ですが卸業務だけでなくデュタステリドの製造販売も行っています。
カプセルの形状がコンパクトで小さく非常に飲みやすい形状をしています。
アルフレッサは自前の製造ラインを持っているわけではなく下請け会社に製造依頼していると推測されます。
シオノケミカル株式会社のデュタステリドカプセル0.5mg「SN」
この薬剤形状は先ほどのアルフレッサと同じになります。
パッケージとPTPに違いがありますが、薬剤そのものは同じものと考えて良さそうです。
シオノケミカル株式会社は1978年創業です。
この会社は医薬品製造販売業者としてジェネリック医薬品を製造販売するだけでなく他にも多様な業務をおこなっています。
例えば、医薬品の原薬・中間体などの輸入・販売、ジェネリック医薬品の製品開発・商品企画・企業間コーディネートといった製薬関連企業向けの幅広いコンサルティング事業などです。
岩城製薬株式会社のデュタステリドカプセル0.5mgZA「イワキ」
これも続けて全く同じ製剤です。
岩城製薬は1931創業でアステナグループ医薬品事業の中核企業です。
下請け会社に発注して製造していると想像できます。
東和薬品株式会社のデュタステリドカプセル0.5mgZA「トーワ」
東和薬品は1951年創業です。
70年以上、ジェネリック医薬品の研究開発・製造・販売に取り組んできた会社です。
この東和薬品の製剤は独自の形状をしています。
ここは独自の製造会社を使っていると思われます。
山形、大阪、岡山に東和薬品の工場があるようですが、ここで製造されているのでしょうか。
品質管理も東和薬品ならではの厳しい管理を行っているようです。
今回のデュタステリド製剤の製造工場は3つと考えられた
以上、おおまかなメーカーのデュタステリドのジェネリック製剤を見比べてみました。
カプセルは3系統の外観にまとめることができました。
グループ①:沢井製薬株式会社,株式会社ビオメディクス,マイラン製薬株式会社
グループ②:アルフレッサ株式会社,シオノケミカル株式会社,岩城製薬株式会社
グループ③:東和薬品株式会社
見た目は全く同じですが、中身の薬剤そのものに違いがある可能性はもちろん否定できません。
ジェネリック医薬品の製造検査の不正問題
2021年に後発医薬品の製造メーカーである小林化工で製造不正が判明しました。
水虫の治療薬であるイトラコナゾール錠「MEEK」に睡眠薬が混入していたのです。
この事件では死亡者も出てしまったとされています。
その後、他の後発医薬品の製造メーカーを調べてみると次々に製造・検査不正が明らかになってしまったのです。
業界大手の日医工も同様に品質不正で行政処分を受けました。
日医工はピーク時に約1700品目を製造していましたが、今となっては905品目まで落ち込む事態になっています。
それから、かなりの時間が経過しましたが今でも日本国内で色々な医薬品が足りない状態です。
23年9月の日本製薬団体連合会の調査によると、後発薬全品目のうち19%で出荷が制限され13%で出荷停止となっています。
沢井製薬も今年10月にテプレノンカプセル50㎎で検査の不正が判明してしまいました。
日本のジェネリック医薬品は利益が出にくく各社が少数多品目を製造していることが不正の原因と考えられています。
国の医療費削減のために処方薬のジェネリック医薬品の比率を80%から90%に引き上げる計画があり、先発品との差額を患者さんが負担することも議論されています。
デュタステリドもジェネリック製造の不正問題の影響を受けて入手が難しくなってきています。
日本国内のデュタステリド後発品の原薬はおそらくインドなどの海外からの輸入によるものです
日本国内のジェネリック医薬品の原薬のほとんどがインドや中国です。
これは日本の国の政策によるものですが、アメリカなど諸外国でも同様の問題を抱えています。
原薬の製造工程の一部でも海外に委ねているものまで含めると、全体の59.4%に当たる5381品目が海外製の原薬を使っているとされています。
この状況を変えるには国の医薬品に関する政策そのものを見直す必要があります。
日本のジェネリック医薬品はインドや中国抜きでは語ることができなくなっています。
もし、海外からの薬剤の輸入を止められてしまうと国内の薬剤の多くはすぐに枯渇することでしょう。
実際に新型コロナ流行時にも咳止めや麻酔薬などが枯渇してしまっています。
最近では先端医療の薬剤ですら、中国に依存しはじめています。
このような事情からAGA治療をおこなうクリニックとしては国内のジェネリック医薬品だけを扱うのは安定供給の点からも非常にリスクが大きいと考えます。
海外製のジェネリック医薬品の方が安全性が高い可能性すらあります。