やせ薬で薄毛になる?アメリカ政府機関FDAの報告について医師が解説します。
今、マンジャロ、リベルサス、オゼンピック、サクセンダといったGLP-1受容体作動薬が「やせ薬(体重減少薬)」としてブームになっています。
実際、その名前を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
しかし、実はこれらのお薬の副作用で薄毛になるという可能性が指摘されています。
今回はマンジャロやリベルサスなどの「やせ薬」で薄毛になることはあるのか?について、駅前AGAクリニックの医師が複数の論文を踏まえて解説します。
GLP-1受容体作動薬とは?薄毛との関連は?
もともとGLP-1受容体作動薬(正確にはGIP/GLP-1受容体作動薬を含みます)は、糖尿病の薬として認可されています。
昔は糖尿病のホルモン治療といえばインスリンくらいしか手立てがありませんでした。
しかし現在では、GLP-1(ジーエルピーワン)というホルモンの働きを助けるお薬としてGLP-1受容体作動薬が開発されたことで、インスリン以外のホルモン治療アプローチによっても血糖値を下げることができるようになりました。
しかもこのGLP-1受容体作動薬には、食事などで高血糖になったときには作動するが、空腹時など血糖値が高くないときにはあまり作動しないという、すばらしい性質があります。
そのため血糖値が下がりすぎてしまう「低血糖」という重大な合併症(副作用)を引き起こしづらい画期的なお薬となっています。
そしてこのGLP-1受容体作動薬は、一部の美容医療において「体重を減らすために使用する」つまり「やせ薬として使えるのでは?」とされ、実際に処方が行われています。
(注:厚生労働省は美容目的でのGLP-1受容体作動薬の使用は推奨していません。)
しかし、このGLP-1受容体作動薬を使うことで、薄毛になる危険性があるというのです。
どんな薬がGLP-1受容体作動薬なの?
- マンジャロ
- リベルサス
- オゼンピック
- サクセンダ(日本は未承認)
- ウゴービ
- ゼップバウンド
- バイエッタ
- ビクトーザ
- リキスミア
- トルリシティ
などが日本やアメリカで承認されています。
(画期的な薬のため、今でもどんどん開発されています。)
髪の毛が脱毛し、薄毛になるのか?
アメリカ政府機関FDA(アメリカ食品医薬品局;Food and Drug Administration)の情報では、GLP-1受容体作動薬の一つであるオゼンピックを使用した場合、プラセボ(偽薬群)と比較して、薄毛が多かった事実について指摘されています。
(参考文献[英語] FDA:https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/nda/2021/215256Orig1s000MedR.pdf#page=205)
どうしてマンジャロやリベルサスで薄毛になるのでしょうか?
GLP-1受容体作動薬と薄毛の関連性については、FDAもすでに数百件の報告を受けているとのことですから、偶然ではなさそうです。
脱毛を引き起こすメカニズムは確定されていませんが、仮説として「急激な体重減少による休止期脱毛症の加速」が提唱されています。
(参考文献[英語] 国際皮膚科学会専門誌:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38741261/)
ものすごく簡単に言うと、急激な体重減少に成功したはいいが、それが体の負担になって抜け毛が加速するという意味です。
なおGLP-1受容体作動薬の脱毛の発症率を平均13.97%とした報告があります。
そしてそれらの中でも、マンジャロは特に脱毛が多い(なんと22.7%)との報告もあります。
(参考文献[英語] Journal of Drugs in Dermatology:こちら)
髪の毛が増える人もいる?
GLP-1受容体作動薬で髪が増えたという方も、ごくまれに、いらっしゃいます。
男性型脱毛症(AGA)の患者様で、マンジャロを使用して糖尿病を治療したところ、AGAも良くなったという症例報告があります。
おそらく糖尿病を改善したことで、薄毛を引き起こす悪玉男性ホルモンであるジヒドロテストステロン(DHT)の血中濃度が低下したことが、男性型脱毛症(AGA)の改善につながったのではないかと考察されています。
(参考文献[英語] アメリカ皮膚科学会専門誌:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39135763/)
ただしこれはあくまで症例報告、つまり「こういう人もいる」というものですから、全体としては薄毛になるリスクのほうが高いと考えられます。
またそこまで薄毛との関連性はないとした報告もありますので、過度に心配して勝手にお薬をやめてしまうのも危険ですので注意しましょう。
(参考文献[英語] 米国心臓協会(AHA)と米国脳卒中協会(ASA)の合同専門誌:https://www.ahajournals.org/doi/abs/10.1161/circ.150.suppl_1.4142154)
まとめ
「やせ薬だと思って使用していたら薄毛になった」
「糖尿病の治療で処方されたのに薄毛になった」
というお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。
マンジャロ、リベルサス、オゼンピック、サクセンダと言ったGLP-1受容体作動薬は、正しく使えば非常に有効性のあるお薬です。
これらのお薬を安易に中止できないことも多いと考えます。
ご心配な方、お悩みの方は、薄毛治療について専門的な知識を有する医療機関を選んで受診するのが良いと言えます。
我々 駅前AGAクリニックでは、薄毛のお悩みを総合的に扱っております。
当クリニックでは、本気で薄毛を克服したいと希望されている患者様に、医学的な根拠を持って、医師が治療に当たって参ります。
まずは駅前AGAクリニックにご連絡ください。