薄毛だと新型コロナウイルス感染症が重症化しやすいという研究結果

現在 世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連した医学論文が複数出版されています。

その中で、薄毛が特に新型コロナウイルス感染症を重症化させる」という内容の論文が発表され注目を浴びています。

新型コロナウイルス感染症については、なるほど確かに「男性の方が女性より重症化しやすい」「男性ホルモンが関係している可能性がある」等という情報は初期の頃から言われていたのですが、それと薄毛が関連しているということなのでしょうか。

そう言われると可能性がありそうに思いますが、はたして真相はどうなのでしょうか。

現在の医学論文から得られる情報を駅前AGAクリニック医師がまとめてみました。

薄毛は、新型コロナウイルス感染症を重症化させるリスク因子なのか?

誰もが気になるこの疑問にアプローチしていくには、以下の順番で検討していくべきであると考えられます。

質問1.新型コロナウイルス感染症は、男性ほど、また年齢が上がるほど重症化しやすいのか。

質問2.薄毛の患者様は新型コロナウイルス感染症になりやすい・重症化しやすいのか。

質問3.薄毛の治療を行うことで新型コロナウイルス感染症の重症化リスクを下げられるか。

 

実は答えはすべてYESなのですが、一つ一つ医学論文を見ていきましょう。

なお一般的に医学論文の解釈は難しい点や注意点が多く存在します。

そのため以下でご紹介する医学論文については、それらをできるだけ噛み砕いた表現にしたり、

一部省略したりしていますことをご了承ください。

(医師・医療者の方へ……それぞれの論文の詳細な情報を確認したい場合は原著をご確認ください。)

 

質問1.新型コロナウイルス感染症は、どのような特徴(例:性別や年齢層など)の人々に重症化しやすいのか。

これは多くの論文からの情報が集まっていますが、例えば初期の頃から言われていた情報として、

Guan W.J., et al., Clinical characteristics of coronavirus disease 2019 in China., N Engl J Med., 2020

という論文を紹介します。

新型コロナウイルス感染症が発生したとされる武漢市(Wuhan city)での患者様に関するデータを解析した論文が、

中国の医学研究者から2020年2月に発表されました。

医学雑誌の名前はNEJM、つまりは世界一の医学雑誌の一つです。

この論文から分かることは、女性42%に対し男性58%と、およそ4:6で男性の患者様が多い。

若い方も多く感染しているが重症化しにくい。ご高齢の方は明らかに重症化しやすい。

喫煙者(現在も過去も含む)は、非喫煙者よりも、重症化しやすい。

もともと合併症(持病)を持っている方のほうが、明らかに重症化しやすい、等です。

つまり新型コロナウイルス感染症の重症化リスク因子は、性別・年齢・喫煙歴・もともとの合併症(持病)です。

この論文が発表された時点では、まだ薄毛との関連は指摘されていません。

ここでお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、上の重症化リスク因子4つは、そのまま薄毛にも当てはまります。

つまり、薄毛にも「男性が女性よりも多く」「年齢が高いほど進行し治りにくく」「喫煙者の方が重症化し」「高血圧などの持病を持っている方が多い」などといった同じ特徴がそのまま当てはまるのです。

 

質問2.薄毛の患者様は新型コロナウイルス感染症になりやすい・重症化しやすいのか。

ここでは2つの研究をご紹介いたします。この2つはほぼ同じ研究チームからの発表です。

A. Goren., et al., A preliminary observation: Male pattern hair loss among hospitalized COVID-19 patients in Spain – A potential clue to the role of androgens in COVID-19 severity, J Cosmet Dermatol., 2020

CG Wambier., et al., Androgenetic Alopecia Present in the Majority of Hospitalized COVID-19 Patients – the “Gabrin sign, J Am Acad Dermatol., 2020

これらの論文は、COVID-19で入院されている患者様を対象としてAGA/FAGAの頻度等を調査したものです。

男性におけるAGAの頻度は79%、女性におけるFAGAの頻度は42%であり、これは一般人口におけるAGA/FAGAの頻度と比較して圧倒的に高い数値です。

つまり薄毛の方は新型コロナウイルス感染症になりやすいと言えるでしょう。

もっとも、アメリカのブラウン大学のCarlos Wambier教授は「薄毛の程度は新型コロナウイルス感染症の重症化を完全に予測できる」とまで述べていますが、現状 それを確実に証明した医学論文は出ておりません。

今後のさらなる研究によって解明されていくことが世界中から求められています。

 

質問3.薄毛の治療(男性ホルモンを抑える薬)を行うことで新型コロナウイルス感染症の重症化リスクを下げられるか。

この点に関してはイタリアのパドヴァ大学から有名な論文が発表されました。

M. Montopoli, et al., Androgen-deprivation therapies for prostate cancer and risk of infection by SARS-CoV-2: a population-based study (N = 4532), Ann Oncol., 2020

イタリアのヴェネト州といえば新型コロナウイルス感染症で多数の犠牲者がでた地域です。そのため4532名もの患者様のデータが集まったようです。

その中で前立腺癌の患者様(注:前立腺癌の治療の一つに男性ホルモンを抑える薬を使用するというものがあります。)のデータを確認したところ、

男性ホルモンを抑える薬を使用している患者様のほうが、そうでない患者様より新型コロナウイルス感染症(SARS-CoV-2感染)のリスクが有意に低かった(p=0.0011, OR 4.86[95%CI (1.88~12.56)])

ということが証明されました。

このことから、薄毛の治療(男性ホルモンを抑える薬)を行うことでも新型コロナウイルス感染症の重症化リスクを下げられる可能性が強く示唆されています。

なおそのメカニズムについては、詳細は専門的になりすぎるので割愛しますが、有力な説として「TMPRSS2と言われるタンパク質の発現を減らすことができるからではないか」と考えられています。TMPRSS2を発現させた細胞を用いることで新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を効率的に分離できるという事実はかなり早い時期に日本初の論文で発表されました。(S. Matsuyama, et al., Enhanced isolation of SARS-CoV-2 by TMPRSS2-expressing cells, Proc Natl Acad Sci USA., 2020)

そしてTMPRSS2は男性ホルモンによって発現が誘導され、男性ホルモンの阻害薬によってTMPRSS2の発現を減らすことができるということも判明しています。このことから男性ホルモンを抑える薬によるTMPRSS2の発現抑制を介して新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が感染しにくくなっているのではないか、と考えられます。

現在もスピロノラクトン等を含めた男性ホルモンを抑える薬による治験が進行中です。

結論

男女問わず、薄毛だと新型コロナウイルス感染症が重症化しやすい。

その原因は、両方とも男性ホルモンに由来するから。

男性ホルモンを抑える薬で新型コロナウイルス感染症を抑制できる可能性がある。

現在も男性ホルモンを抑える薬による治験が進行中。

 

薄毛だと新型コロナウイルス感染症が重症化しやすいという研究結果について見解をまとめてみました。

いずれにしても、薄毛は人生におけるQOLの低下を招くことは間違いありません。

薄毛は改善できる時代です。気になり始めたら早めに専門医までご相談ください。

執筆者
長谷川 誠
2011年 千葉大学医学部を卒業
2011年 千葉県立病院群にて初期臨床研修
2013年 千葉大学医学部附属病院麻酔・疼痛・緩和医療科に入局
2015年 麻酔科標榜医取得
2017年 開院した駅前AGAクリニック大阪梅田院に非常勤医師として勤務 AGA、FAGA、円形脱毛症等、多数の患者様の発毛治療にあたる
2020年 AGA診療指導責任者に就任、東京北千住院の院長に就任
2021年 駅前AGAクリニック三重四日市院 院長
麻酔科標榜医、麻酔科専門医

駅前AGAクリニック【全国13院 東京新宿院東京北千住院京都烏丸院大阪梅田院岡山院鹿児島院 など】

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