AGA治療薬プロペシアの女性の使用について|触るのも危険って本当?
男性のAGAの治療薬にはプロペシアやザガーロなどの5αリダクターゼ阻害薬があります。
これらはAGAの特効薬とも言える薬剤ですが一般的には女性は使用しません。
妊娠して胎児が男の子だった場合、この薬を服用することで男性器の発達が阻害されてしまうかもしれないのです。
また、これらの薬剤は経皮吸収が起こりうる薬剤でもあります。
皮膚から吸収されるため女性は触ってもいけないとされています。
このような話を聞くと恐くなると思います。
彼氏や旦那さんが内服している場合はどうなのだろうと思うかもしれません。
また、女性の場合は難治性の女性型脱毛症にその治療効果の高さからあえて使用することもあります。
妊娠していないという条件で使用されることになりますが、その際に万が一妊娠してしまった場合はどうなるのでしょうか。
今回は5αリダクターゼ阻害薬が女性に与える影響について駅前AGAクリニックの医師が解説します。
— 目次 —
- まずはプロペシアとザガーロについて知ろう!
- 女性の使用は危険!?妊娠中の使用について
- 触るだけでも危険って本当?妊娠中の注意点とは
- 注意していれば効果的!プロペシアとザガーロの効果
- それでも怖い方はこちら|そのほかの治療方法について
- まとめ
まずはプロペシアとザガーロについて知ろう!
冒頭で触れた、5αリダクターゼ阻害薬の女性の使用について説明する前に、AGAの原因と、そもそも5αリダクターゼ阻害薬とはなんなのか説明します。
AGAの原因って?
AGAの原因は男性ホルモンの一種DHT(ジヒドロテストステロン)が男性ホルモンレセプターに作用すると毛髪のヘアサイクルを短縮してしまうことにあります。
短縮したヘアサイクルでは毛髪の成長期が短くなり毛髪が成長する前に抜けてしまうという現象が起きるのです。
成長できない毛髪はミニチュア化して軟毛化するという特徴的な所見が表れます。
さらにヘアサイクルが短いことで毛母細胞は一生懸命細胞分裂を繰り返し、その寿命を使い果たしてしまうのです。
これがAGAの患者さんに起きていることです。
女性でもやはり女性ホルモンが減り男性ホルモンが作用することで同じようなことが起きています。
5αリダクターゼ阻害薬の働きとは??
毛細血管から運ばれてきたテストステロンは頭皮内にある酵素の5αリダクターゼによってDHTに変換されます。
この酵素の働きをブロックすればDHTの産生が止まります。
これが5αリダクターゼ阻害薬です。
5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型があります。
Ⅱ型をブロックする5αリダクターゼ阻害薬がプロペシアです。
Ⅰ型とⅡ型の両方をブロックする5αリダクターゼ阻害薬がザガーロです。
これによりAGAの治療が可能となるのです。
最近では女性にもこれらの薬剤が使われるようになってきています。
プロペシアとザガーロの違いについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
【番外編】DHTってなんのためにあるの?
男性ホルモンのDHTはそもそもどのような存在なのでしょうか。
成人男性のDHTの産生を5αリダクターゼ阻害薬で止めてしまっても本当に大丈夫なのでしょうか。
実はDHTは成人男性ではすでに大きな役割を果たしていないことが分かっています。
DHTの作用は男性ホルモンの主役となるテストステロンと同じような作用なのです。
成人男性では十分な量のテストステロンが分泌されているためDHTが無くなってしまっても変化がないのです。
DHTの重要な役割は胎児期や小児期にあると考えられています。
この時期はまだ精巣の発達が未熟な段階でテストステロンの分泌が不十分なのです。
そこで人間はテストステロンを変化させてより活性の高いDHTを作り出し、効率が高い男性ホルモンとして作用させたのです。
DHTがあることにより胎児の性別も男性となり男性性器の発達を促します。
そして、大人になるにつれ精巣からテストステロンがしっかりと分泌されるようになりDHTはその役目をテストステロンに譲り役に立たなくなるのです。
しかし、DHTはその後も前立腺や頭皮に存在し続けます。
そして、前立腺肥大症やAGAなどの負の側面も見せ始めるようになってくるのです。
― POINT ―
✔︎AGAはDHTによるヘアサイクルの乱れが原因
✔︎5αリダクターゼによってDHTが合成される
✔︎プロペシアとザガーロは5αリダクターゼ阻害薬
女性の使用は危険!?妊娠中の使用について
プロペシアもザガーロもDHTを抑制する前立腺肥大症の薬として登場しましたが、前立腺肥大症と同じ原因であるAGAの特効薬として普及しています。
では、女性がプロペシアやザガーロを内服するとどうなるでしょうか。
特にそれ自体で女性に問題は起きないのです。
問題が起きるとすれば胎児です。
男児がお腹の中にいた場合、男性性器の発達を促すDHTが産生出来ないので胎児の外生殖器の発達を阻害してしまう可能性があるのです。
これはお母さんだけの問題ではありません。
生まれてくる子供の人生に関わってくる大きな問題となってしまいます。
このようなことを踏まえ日本では女性はプロペシアやザガーロは内服しないようにすることが一般的になっています。
― POINT ―
✔︎妊娠中の使用は禁忌
✔︎胎児の生殖器に問題が起こりうる
触るだけでも危険って本当?妊娠中の注意点とは
AGAの治療を行っている男性が女性に影響を与えることはないのでしょうか。
これを心配される方が多いですが、ほとんど問題になることはありません。
経皮吸収について
男性に処方された薬剤を女性が触ることは危険とされています。
これらの薬剤は経皮吸収されるからです。
理論上はこのような扱いですが、実際に影響が出るかは不明です。
それでも女性や子供が触れることのないようにお願いします。
献血について
フィナステリドやデュタステリドを内服している男性が献血を行うとどうなるのでしょうか。
血液の中に5αリダクターゼ阻害薬が存在しています。
この血液を輸血された女性患者さんが妊娠した場合に問題になる可能性が考えられます。
薬により体内からの排泄速度に違いがあります。
フィナステリドで1ヵ月、デュタステリドで6カ月は献血を控えるようにしてください。
精子への移行性について
経皮吸収される薬剤ということは膣からの吸収も起こり得ます。
それではこれらの薬剤の精子への移行性はどの程度なのでしょうか。
人と同じと考えられるアカゲザルで実験を行っています。
まずはフィナステリドです。
フィナステリド1mgを内服している35人の男性の精液中濃度を測定したところ6割の男性では検出すらできませんでした。
検出された中で最も高濃度だった患者さんの精子5mlの中に含まれるフィナステリドが全て吸収されたとしてもアカゲザルの発育異常を引き起こす750分の1より低いという結果でした。
次はデュタステリドです。
5mlの精液中に含まれるデュタステリドが50kgの女性に全て吸収されたとして、その186倍の量をアカゲザルに静注して実験を行っています。
これで胎児に影響がないことが確認されています。
実際は精液中ではデュタステリドはタンパク質と結合しており吸収は起きづらいと考えられます。
このように精液に含まれる薬剤の量は少なく全く問題になることはないのです。
これらの結果から、きちんと注意していれば問題ないことがわかります。
― POINT ―
✔︎皮膚から吸収されるかどうかは不明
✔︎献血により体内に吸収される可能性がある
✔︎精子による移行性は考えにくい
注意していれば効果的!プロペシアとザガーロの効果
上記のようなプロペシアやザガーロの特性を踏まえた上で女性がこれを内服することは許されるのでしょうか。
勝手な判断で安易に若い女性が内服することは許されないでしょう。
生まれてくる子供の分の責任も負うべきだと思われます。
しかし、絶対に妊娠しないという条件なら内服も可能なのです。
実は海外では女性も積極的に5αリダクターゼ阻害薬を使用しています。
以前の大規模な試験でフィナステリド1mgを女性が内服したところ治療効果が認められませんでした。
これによりフィナステリドは女性には効かないと言われたこともあります。
しかし、最近では女性の場合はより多く内服する必要があると分かってきました。
投与量を上げると男性と同じでかなり効果的だったのです。
1日2.5mg~5mgが適正量だと考えられています。
現在では海外主体でフィナステリドによる女性型脱毛症の治療が行われるようになって来ています。
しかし、残念ながらやはりフィナステリドを内服しているにも関わらず妊娠してしまう女性患者さんも現れてしまいました。
プロペシアの服用中に妊娠してしまった場合はどうなるの?
気をつけてはいたものの、万が一プロペシアの服用中に妊娠してしまった場合はどうすれば良いのでしょうか
2018年8月のInternational Journal of Clinical Pharmacyにそのような患者さんの報告が載りました。
『Finasteride use during pregnancy and early neonatal outcome: a case report』
Doua AlSaadさん達が発表した症例報告です。
39歳の女性が薄毛の治療としてフィナステリド2.5mgを内服していたところ、予期せぬ妊娠をしてしまったのです。
その彼氏もAGAでフィナステリドを内服中でした。
カップルで治療を行っていたようですね。
気づいた時には妊娠5週だったようです。
さらに不運なことにその胎児は男の子だったのです。
お腹の中の赤ちゃんをエコーで観察していたようですが、エコーでは限界もあるため、詳細は出産時まで分かりません。
結局、無事を祈りながら出産したところ胎児は大丈夫だったようです。
フィナステリドは24時間も経過すると体の中からほとんどなくなります。
これが長時間作用するデュタステリドだったとしたら大変なことになっていた可能性が高いです。
この症例は運が良かったと考えるべきでしょう。
妊娠可能性のある女性は絶対に服用しないようにしましょう。
― POINT ―
✔︎妊娠に注意して服用すれば効果的
✔︎男性よりも多く服用しなければ効果がない
それでも怖い方はこちら|そのほかの治療方法について
プロペシアの服用は、妊娠に気をつけてさえいれば安全かつ効果的であることがわかったかと思います。
それでも服用が怖いと方に向けて、それ以外の治療方法を説明します。
スピロノラクトン
女性の薄毛の治療薬として認められているものがで、スピロノラクトンという治療薬があります。
スピロノラクトンは、主に利尿剤として処方されますが、テストステロンの抑制や、DHTを減少させる効果があります。
女性のスピロノラクトンの使用に関する詳しい内容はこちらでまとめておりますので、こちらをご覧ください。
外用ミノキシジル
AGAや円形脱毛症の治療によく用いられる有効成分として、ミノキシジルがあります。
そのミノキシジル配合の外用薬が、外用ミノキシジルです。
頭皮に直接塗布するといった形で使用します。
プロペシアやデュタステリドは5αリダクターゼの働きを阻害し抜け毛を抑える働きがあるのに対し、ミノキシジルは血行を促進することで発毛を促す働きがあります。
外用ミノキシジルについてはこちらで説明しているので、詳しくはこちらをご覧ください。
【最新治療】育毛メソセラピー
上記の治療方法以外に、非常に効果的な治療方法が育毛メソセラピーです。
育毛メソセラピーは、錠剤を服用したり、頭皮に塗布する治療薬とは異なり、頭皮に有効成分を直接注入する治療方法です。
頭皮から直接髪の毛の成長因子などを注入するため、効果が出るまでの期間が短く、さらに効果が出やすいという特徴があります。
また、注射をした箇所の赤みや腫れなどが起こる可能性がありますが、それ以外の副作用はほとんどないといった点もメソセラピーのメリットと言えます。
メソセラピーの治療内容や、適切な治療方法について、まずはクリニックへのお問い合わせから検討してみてはいかがでしょうか。
― POINT ―
✔︎スピロノラクトンの服用でDHTの減少が見込める
✔︎メソセラピーは効果的で、副作用が少ない
✔︎まずはクリニックを受診することがオススメ
まとめ
いかがでしたか?
女性のプロペシアやザガーロの使用は、十分に気をつけて使用すれば非常に効果的です。
妊娠中の使用や、服用中の妊娠には気をつけましょう。
また、紹介したように、プロペシアやザガーロの他にも治療方法は様々です。
駅前AGAクリニックグループは最先端の治療を心がけています。
しかし、このような安易な投薬は人生を狂わせる可能性もあります。
駅前AGAクリニックでは女性にフィナステリドを処方する場合は絶対に妊娠する可能性がないことが条件となります。
若い女性の場合はやはり禁忌の扱いとしております。
フィナステリドをご希望される場合でもある程度のご年齢で難治性の女性型脱毛症に限定しております。
まずは通常の女性型脱毛症の選択肢を試してからの判断でも遅くはないと考えております。
当院では女性の薄毛の治療も専門的に行っております。
お気軽にご相談ください。